ブラックボックス構築の重要性について

高橋 祐希
祐希
祐希
今回はブラックボックス構築の重要性についてお話しします。
はるか
はるか
ブラックボックスって何ですか?
祐希
祐希
ブラックボックスとは簡単に言えば営業上の秘密のことです。これを作らなかったがために容易にビジネスモデルをまねされてしまった、なんて言うことをよく聞きます。是非この記事を読んで頂き、ブラックボックスの構築を検討してみてください。

Ⅰ.ブラックボックス構築の考え方

海外進出を行う場合進出形態のパターンとして100%自分で出資する「独資」以外に、現地パートナーと共同で出資する「合弁」や、ビジネスモデルを貸し与える「フランチャイズ」など、現地パートナーの事業に対する関与度が高い形態があります。

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この際、海外展開で実際に行う自社のビジネスモデルがパートナーに開示され、または提供されることになります。ビジネスモデルを開示しないと現地で事業が進まない一方、ビジネスモデルが開示されると模倣が容易となってしまいます。海外進出を果たす日本企業にとって自社ビジネスモデルは事業の根幹であることから、パートナーなど他社に開示することを前提に、ビジネスモデルの模倣困難性を高めていく必要があります。

日本企業のビジネスモデルを実施することを目的として、①合弁契約を締結し合弁企業を設立する場合や②フランチャイズ契約を結んでフランチャイズパートナーとビジネスを行う場合、自社のビジネスモデルの核となる部分を開示しなければ現地で事業を行うことが難しいケースが多いです。

主にレストラン業におけるレシピや、小売業やホテル業などにおける運営ノウハウなどがビジネスモデルの核の部分となることが多いですが、①の場合は、パートナー側も合弁会社の運営主体として参画することになるため、各種情報へのアクセスが容易となりますし、②の場合は技術やノウハウをフランチャイザー(日本側)がフランチャイジー(パートナー側)に提供していかないと、ビジネスモデルのカーボンコピーを行うFCビジネス自体が成り立たなくなります。

事業を現地で実施するために、これらビジネスモデルの詳細を先方に伝えることは致し方がない部分も多いですが、それを学んだパートナーが合弁契約やフランチャイズ契約の契約期間満了後に契約を延長せず、単独で同様のビジネスを実施しようとするケースが多数みられます。

同じノウハウを持った企業が同業に参入することになると手強い商売敵になるとともに、顧客の取り合いになることも考えられます。さらには、自社が展開していない第三国にいち早く進出し、先にブランドを構築してしまう恐れも考えられます。このため、ビジネスモデルを開示する側としては、何かしらの形で核の部分をブラックボックス化しビジネスモデルの模倣を困難にし、自社の存在価値を保持する必要があります。

サービス産業の進出において、自社のビジネスモデルをブラックボックス化する方法としては主に①第三者を介在させる方法、②技術を設備に依存させる方法、③契約上で縛る方法の3パターンがみられます。

Ⅱ.ブラックボックス構築のパターン

1.第三者を介在させる方法

一つ目は、サービス提供を行うまでの流れの中に第三者を介在させる方法です。主に外食業で見られる方法ですが、例えばラーメンのたれや揚げ物の粉など秘伝のレシピを持っている場合、このレシピを開示して作らせると同じものを作ることが出来るようになってしまいます。しかし、秘密にしたいからと言ってこれらの食材を日本で製造して全量を輸出するのはコスト的に見合わないケースも多いです。このため、現地で複数の第三者を介在させることによって、秘密情報を保護する方法があります。

例えば、日本企業Xが現地企業Yとの間でFC契約を締結し、YがラーメンブランドZを展開するケースを考えてみましょう。XはYがZを運営するにあたって、ノウハウや技術を提供することになりますが、日本においてもラーメンスープの核となるタレについてはレシピを他者には提供していない状況です。

海外進出においても同じようにレシピの公開をしないようにするため日本からの全量輸出を考えました、設定単価と輸送コストが見合わないため、ある程度の単価設定に抑えるためには現地でのタレ製造が必要となります。現地に材料の集中製造工場(セントラルキッチン)を設けることも考えられますが、本案件でXはYとの間で越境でのFC契約を締結しており、X自身は現地に子会社を設立していないため、セントラルキッチンを自身で建設する場合は、現地に法人を設立して工場を建設することになり、越境FC契約でのコスト面でのメリットが失われてしまいます。

他の手段としては、現地食品加工会社に製造委託をすることが考えられますが、タレの製造を一社に任せてしまうことになると、その会社に完全なレシピを公開する必要が出てくるため、製造委託契約が終了した場合に同社がそのレシピを使って類似品を作り他社に売ってしまうリスクが考えられます。この為、タレのレシピの工程を2つ(αとβ)に分割し、現地食品加工会社①にαを作ってもらい、②にβを作ってもらうという方法をとります。これらをYの店舗において配分通りに配合してもらうことでタレができるという仕組みを作ります。これによって、加工会社①、②、Yそれぞれが完全なレシピを知ることなくタレが完成・供給されることになります。タレのレシピをブラックボックスにすることによって、模倣を防ぐわけです。

2.技術を設備に依存させる方法

二つ目の方法としては、作業の一部を機械化する方法が考えられます。サービスの内容によっては、提供までの工程を一部機械化することができる場合も多いです。

例えば、フランチャイズビジネスの発祥企業と言われる米ケンタッキーフライドチキンは、フランチャイズビジネスを実施するにあたり、フライドチキンを揚げる工程を機械化しています。そして、フランチャイジーとの契約の中で、店舗で提供するフライドチキンを製造するために必ずフランチャイズ本部であるケンタッキーフライドチキンからフランチャイジーに対して提供されるこのチキンフライヤーを使用することを求めます。このフライヤーを使うと、技術指導を行わなくとも自動でフライドチキンが作られます。この為、フランチャイジーにとっては簡易的に多店舗と同様のフライドチキンを顧客に提供できるようになる一方で、フランチャイザー側にとっては、ノウハウ提供をこの機械の提供で代替することができるため、ノウハウが流出するリスクが低くなります。また、FC契約が終了した際には、この機械を引き上げることによって、元フランチャイジーはケンタッキーフライドチキンのフランチャイズ時代と同じ味のフライドチキンを提供することができなくなるわけです。工程を機械化することによって、技術をブラックボックス化し模倣を防ぐ方法です。

3.契約上で縛る方法

三つ目の方法として、契約上で縛る方法が考えられます。この方法は、主に(1)、(2)と一緒に取られるケースがほとんどです。

例えば、FC契約においてノウハウや技術を提供・開示する契約となっている場合、「フランチャイジーが事業を実施するのに必要な範囲において」ノウハウや技術を提供・開示するといった文言の契約条件になっていないと、(1)のようにタレのレシピをフランチャイジーに提供しなかった場合は契約違反=債務不履行による損害賠償請求の対象となってしまいます。また、(2)でも言及したとおり、フランチャイジーとして契約し店舗を開店する場合に、それぞれの店舗においてフランチャイザーが指定する食材や機械を使用すると行った内容の契約条項を入れておかないと、作業の一部を機械化することによるブラックボックスの構築ができなくなってしまいます。

この為、実際にサービス提供までの過程のどの部分をブラックボックスとするかを検討し、それを実行力のあるものとするために、しっかりと契約内容に落とし込むことが必要になるわけです。

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髙橋祐希
髙橋祐希
海外進出コンサルタント
外食・小売・教育・理美容・コンテンツなどのサービス産業を中心に海外への進出・店舗開店支援を行います!
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